すずのうた

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トーマの心臓という傑作

今週のお題

 

好きな漫画といえば、頭に浮かぶのは萩尾望都先生の「トーマの心臓」。

 

私が初めてこれを読んだのは、小学4年生で学校を風邪で休んでいる時。母が面白いから読んでみなさいと手渡されたのが「トーマの心臓」なのでした。今思えば、母よ、小学校4年生の私になんて本を手渡しているのだと思うのです。渡すの早すぎるだろ!と。そう、私の母は、一風変わっていて、母は幼少期から男色物を読み漁り(風と木の歌が発刊される前はまだまだBLなんて異色のもの。母はその手の話を読みたくて仕方なくて古典を読みつくすしかないと古文も読みこなす生粋の腐女子だったのです。)、その手の古典が本棚に並ぶ家で育った私。子供の私が一番初めに読んだ漫画が「パタリロ」「風と木の歌」「ポーの一族」と他の子供たちと全く話があわない!という育て方をされておりました。そして、渡された「トーマの心臓」!!!幼少期からBLの英才教育を受けてきた私でしたが、しかし、母よ、子供に渡すチョイスがものすごすぎる。風邪ひいているのに、こんな人生の大問題つきつけてくる漫画、渡してくるのかと。

 

はじめての「トーマの心臓」は、全く、全く、意味が分かりませんでした。読了して、「は、何がいいたいの?なんでユリスモールは許された感満載なの!?え、なんで、なんで???名作って聞いたけど、このどこが名作なの!?」小学校4年生の私は、内容が全く理解出来ない漫画が初めてで衝撃を受けました。世間や、周りの大人は名作だというのに、私にはちっとも理解出来ない。少年たちの心の機微が分からない。分からないだらけの漫画を読んだ衝撃と同時に、きっとつまらない漫画だったんだと小学生の私はそう結論づけて、落ち着いたのでした。

 

しかし、分からない漫画に出会った衝撃は、ずっと心の中に残っていました。そして、高校生になったころ、また風邪をひいて、学校を休むことになりました。熱に浮かされながら、私は、小学生の時に読んだ全く分からなかった漫画を思いだしていました。あれは何だったんだろう、ずっと心にひっかかっている、面白くないかもしれないけど、特に読みたいものも今ないし、もう一度読むかと、気軽に「トーマの心臓」を手に取ってしまいました。小学4年生の時に分からなかったことが、高校生ともなると、ぐんぐん心に入ってくる上に、思春期の自分の悩みや苦悩と重なって、大号泣したあげくに、ユリスモールと完全同調してしまい、もう信仰の道を歩むしかないぐらいな勢いで読了。風邪ひいていたのなんて、どこへやら、ああこの思いを、許された気持ちを誰かに伝えたいっと、布団から起き上がってそわそわする羽目に。そして、6年越しぐらいで、母に「ああ、すすめてくれて、ありがとう」と感謝できるように。母よ、ただ腐っているだけだと思っていたけど、母は偉大でした、ちゃんと名作でした。小学4年の時に理解出来ず、萩尾望都先生って分からないと思って、本当にすみませんでしたと、萩尾望都先生は本当に偉大ですと、どの方向に祈ればいいか分からないけれど、萩尾先生に祈りを捧げるのでした。

 

あれから、ずいぶん経ちますが、時折読み返しては、自分自身の生き方を考えなおさせてくれます。優しさ、本当の愛とは何だろう。生きていくとは何だろう。私の漫画人生の中で、いえ、読んだものの中で一番衝撃を受けた作品であることに間違いはなく、ずっと私の心の中で、私に問い続けてくれる作品なのです。